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光紡ぐ神の旋律 ~ Melodies of Memories ~


第十一章 02

 ……ああ。
 なんて気持ちいいんだろう。
 こんな景色のいいところでヴァイオリンを弾けるなんて。こんな清浄な空気を震わせることができるなんて。
 この感動を、たくさんの人々に聴いてもらえるなんて。
 いままで長いあいだ忘れていた感覚。わたしがいちばんのしあわせを感じることができる瞬間。
 どうしてこんなにまで素敵な感覚を、忘れていたんだろう。
 展望台にいる人たちの様子は、ヴァイオリンに集中していてよくわからない。けど、不快に思っている人がいないみたいなのは幸いだった。
 この場所は天宮くんに教わった。わたしが月城くんに追い詰められた日の夜、天宮くんに電話したときだ。
 あのときわたしはこう訊いた。
『月城くんにヴァイオリンの演奏を聴いてもらいたいんだけど、どうすればいいかな』
 天宮くんは少し考えて、こう答えた。
『今度の日曜日、桃子ちゃんの命日なんだ。だからそのとき――』
 この展望台の場所を、天宮くんは教えてくれた。ここでこの時間帯にヴァイオリンを弾けば、お墓参りに来ている月城くんにもその音色が届くはず――そんな大事なことを教えてくれた。
 天宮くんには、もう返せないほどの恩ができてしまった。今度、それはなんらかの形で恩返しをしないといけない。
 月城秀一くん。わたしは、あなたのことが大好きです。ずっとそばにいたいです――そんな言葉にするのが恥ずかしい想いでも、ヴァイオリンなら。
 わたしは人一倍不器用で口下手だから、自分でできることでしか想いを伝えることができない。そんなわたしには、目下のところヴァイオリンしか方法がなかった。
 ヴァイオリンなら、この想いを伝えられる。人はひとりじゃないってこと。自分のまわりには、自分を見ていてくれる人が必ずいるってことを、わたしは、この天野宮の地で知ることができた。
 お母さん。お父さん。
 そして、クラウザー先生。
 天宮くんも、木崎さんも石川さんも坂井くんもみんな。みんなわたしのことを支えてくれていた。いままで言えなかった感謝の気持ちも、ヴァイオリンを通じてなら。
 これかも、ずっとヴァイオリンを弾いていたい。いま、わたしは心の底からそう思っていた。
 だから、そのきっかけを与えてくれた月城くんも――


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