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光紡ぐ神の旋律 ~ Melodies of Memories ~


第十一章 07

 抱きしめられた。
 月城くんに。
 初恋の彼に。
 問答無用だった。
 彼がわたしの耳元で囁いている。
 けど、なにを言っているのかよく頭に入ってこない。
 それほどまでにわたしの思考は熱を帯びていた。
 耳元で囁く声が、少しくすぐったい。
 それでも、これだけは聞こえた。
「でも、桃子――それが俺の『世界』のすべてだ。いまでも、桃子より大切なものは存在しない。これから先も、それは永久に変わらない」
 桃子という名が月城くんにとってどれだけ重いものなのか、言葉の響きでわかる。
 ……わたしには無理なのかな。
 これから先、わたしが月城くんを支えていくことは――そんな考えが大きくなっていく。 月城くんがわたしの肩を抱いたまま、正面に見据えてきた。
 視線が交錯し、心臓の鼓動が一段と高まる。
 吸い込まれそうなほど澄んだ瞳が、わたしに向けられた。混濁も迷いもなにもない、純粋な眼差し。彼をはじめて見たときの瞳そのものだった。
 けど、次の月城くんの言葉が、わたしを凍りつかせた。
「これでやっと、死ぬ覚悟ができたよ」 
「え……?」
 死ぬ。
 ……死ぬ?
「月城……くん?」
「桃子のそばに行くこと。それが俺の答えだ――さようなら」
 揺るがない決意を秘めた瞳の光が、わたしを射抜いた。
 月城くんはわたしから手を離し、颯爽と踵を返していった。
「あっ……」
 ――だめ! いまの彼をひとりにしちゃ!
 どこかからそんな声がした気がする。でも、唐突な言葉にわたしの体は動かない。金縛りにあったように固まっている。声帯も凍りついていた。
「つ、月城くんっ!?」
 やっと声が出たときはもう、月城くんの姿は消えていた。


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