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光紡ぐ神の旋律 ~ Melodies of Memories ~


間奏曲 ― Interlude ― 01

 わずか五歳で、少年は日本のピアノ業界、ひいてはクラシック業界全土を震撼させていた。
 人の価値観にまで絶対的な影響を及ぼすほどの旋律。
 かつて、多くの先達が目指した「音」があった。
 すべての人の心を揺さぶる究極の音楽。ジャンルや形式、演奏様式や伝統などにとらわれることなく、偉人たちが目指した至高の旋律。
 いつの頃からか、人はそれを「神の旋律」と呼ぶようになった。
 作曲者も演奏するアーティストたちも、すべてが逃れようなく神の旋律を目指し、音楽に取り組んでいく。
 聴く人すべてを感動させるなんて、不可能ではないかという考えがよぎっても、とどまることはできない。
 なぜなら、それが音楽の持つ魔力に魅せられた者たちだからだ。
 音楽という事象の最後の到達点が、神の旋律であった。
 少年が奏でるのは、まさにその神の旋律にほかならなかった。
 個人の好みや嗜好を超越して、少年の持つ音楽は徹底的な普遍性をはらんでいた。
 つまり、子どもでも口ずさめる簡単な童謡でも、好みが別れる癖のある曲でも、少年の前ではまるで別次元の名曲となりえた。
「ごくありきたりなものをありきたりに、それこそなにも飾らず自然に創り出したとき、時間の淘汰を越える不滅の存在が誕生する。それが『神の旋律』にほかならないのではないか」
 とある高名な音楽家が、神の旋律に対してこのような格言を残した。
 少年の音楽は、まさしくそれだった。
 多くの偉人たちが探し求め、その中で培ってきた音楽の歴史を根本から塗り替えたのは、日本に生まれてわずか五年しか経っていない少年だった。
 少年の名は、月城秀一といった。
 


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