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いま、その翼を広げて


Alive & Brave 12 - セイラ

 見せ場はダンスや歌だけではない。
 中盤以降に殺陣がある。
 謎の存在である黒衣の騎士が登場する。目元まで覆った漆黒の兜をかぶり、道化師と同じく顔の全容が見えない。台詞は少ないのに重厚な存在感。悪役のわたしと対峙する役目だ。
 黒衣の騎士は長剣。わたしは大鎌と斧のシルエットを合わせたかのような長柄武器。
 お互いが武器を構える。やがて音もなく疾走、激突――
 激しく打ち合う剣戟。もちろん模造品だが、本物のような質感がある。
 目にもとまらぬ速さで打ち合いながら、舞台上を駆けめぐる。
 観客の息をのむ気配。
 殺陣という概念を超越した立ちまわりが可能なのは、わたしと「彼」の身体能力を惜しむことなく発揮しているからだ。
 途中で凜の役である王子が参加する。最初は黒衣の騎士側についているが、わたしにそそのかされて裏切るというストーリーだ。
 凜はわたしたちの動きに、苦もなくついてきている。体幹が安定していて、動きの切れがすさまじい。やはりもう、凜の根底に武術の基礎があることは疑いなく、そして凜はそれをもう隠すような真似はしなかった。
 凜の持っていた槍が突き飛ばされ、膝をつく。
 わたしは王子に甘言を弄する。帝国への恨みを捨てきれない王子はとうとう、激しく葛藤しながらも悪に屈してしまった。
 このときの凜の演技は、演技とは思えないほど真に迫ってくるものがあった。
 いつか凜が言っていた。
 この役は、まさに俺そのものだね、と。


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