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いま、その翼を広げて


Alive02-7

 さらに翌日の朝。
「り~~~んっ!」
 朝の物静かな教室に響きわたる奇っ怪な叫び声。続いて、俺の席に駆け寄ってくる足音。振り返るまでもなく、目の前に登場したのはリュックを背負ったままの光太だった。
「朝っぱらからうるさいな。なんだよ」
 せめて荷物を自分の席に置いてきてから来い。
「どうして教えてくれなかったんだよぉ!?」
「なにが?」
「だから、転校生の案内イベント!」
「……は?」
「放課後、セイラさんを案内してまわってるんだろ!」
「あれ……言ってなかったっけ?」
「聞いてねえよぉ~」
 大仰な動きで、俺の机をばんばん叩いた。
 そして、ギャルゲーにおける転校生の案内イベントがいかに重要かを、懇々と聞かされた。やかましい。
「今日の放課後もやる? 俺も付き合っていい? ねえ、いいよね?」
「んー、俺は別にいいけど」
 今日は初日のようにセイラ、惺、俺の三人でまわる予定だった。悠は病院があるから不参加。ちなみに今後参加してくれるかどうかは未定。惺とセイラのふたりはまだ登校してきてない。
「……まあ、大丈夫か」
 そういえば、惺からほかの連中も誘ってみたらどうだという話もあった。セイラも拒んだりはしないだろう。
「よろしく頼む! 昨日の夜、豊崎にさ、凜たちがそういうことやってるって教えてもらって、これはもう参加するしかないってね!」
 真奈海にはおとといの夜、たまたま電話がかかってきて、そのときに放課後の学園散策のことを伝えていた。
「でもさ、おまえアニメはいいの?」
「ふっ、昨日から今朝まで徹夜で視聴して、ため録りしてたやつは全部見た!」
「……ああ、だから目の下にクマが」
「今日の授業はスリーピングタイムだぜっ! ……ふっ、そんな尊敬の眼差しで見るなよ。照れる」
「軽蔑と憐憫な。勘違いするな」
「じゃあ、今日よろしく!」
「……おう」
 光太は元気な足取りで自分の席へ向かう。そしてリュックを机の横に引っかけたあと、なんの躊躇もなさそうに机に突っ伏した。どうやら本気で寝るつもりらしい。
 ……あいつ、中間テストの成績、けっこう悪くなかったっけ。いろいろな教科の先生に「このままじゃだめだぞ」と諭されていた気がする。あの様子だと、今後も思いやられる。まあ、本人の問題だから放っておこう。
「おはー」
 と、誰かさんと違って清々しい挨拶をしながら教室に入ってきたのは、真奈海だった。
「んん? なんか元気ないね」
「朝っぱらからうるさいやつの相手しててさ」
 光太を指さしながら言う。
「あれ。あいつもう寝てる」
「昨晩は貫徹したらしい」
 光太から聞いたとおりの理由を教えた。
「うわぁ、川嶋らしいねー」
「真奈海、あいつに放課後の学園散策のこと教えたんだって?」
「あー、昨日メッセのやりとりしてるときに、そんな話したような……まずかった?」
「いや、別に。ただ今日の放課後は光太も参加することになった」
「え、そうなの? ならあたしもいい?」
「あれ、バイトは?」
 今日水曜日は、たしかスーパーのバイトが入っていたはず。
「ふふっ、今日は久しぶりのお休みなのさ! 今日と別の日のシフトを交換してほしいて言われて」
「そう。まあ、真奈海が参加するのは大丈夫だと思うけど、おまえ進級してからずっと働きづめだっただろ? 休まなくて大丈夫か?」
「そんな心配しなくても大丈夫だよー、まだ若いんだから。先週はテストあったから、まるまる休んでたし。それにちょっと気分転換したいんだ」
「そうか。わかった。ふたりが来たら話してみよう」
「ほーい」
 しばらくしてから、惺とセイラが登校してきた。ふたりに確認したところ、問題なく了承してくれた。
「じゃ、今日はよろしく!」
「うむ。よろしく……ふふ、楽しみだ」
「そお?」
「ああ。真奈海とは少し話してみたくてな」
「あら、光栄。ふふっ」
「ところで、光太はなぜか寝ているが、放っておいていいのか?」
「あー、大丈夫だよ。いつものことだから」
「そうか」
「でさ、今日はどこまわるの?」
「……む。決めてないな。真奈海、学園の中で、どこかおもしろそうなポイントを知らないか?」
「えっと……おもしろそうか……んー、そうあらためて聞かれると答えにくいね」
「こういうのは光太の得意分野だな」
 きっとアニメとかラノベとか漫画とかをヒントに、ピントのずれた回答をしてくれるはずだ。
「そうだよー、なんでこんな肝心なときに寝ちゃってるの、もう!」
「起こさないけどな」
「ま、聞くのは放課後でいいでしょ」  
「だな」
 それから間もなく織田先生が来て、ホームルームが始まった。
 先生に光太が叩き起こされのは、言うまでもない。


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