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いま、その翼を広げて


Brave02-3

 高速道路の直線に差しかかったところで、ギアチェンジ。
 一気に加速する。
 わたしの乗る大型クルーザー、グランフォルト社のフラッグシップモデル、フォースアテリアルPZXが、乗用車やトラックを次々と抜いていく。
 アクセルをフルスロットルにしたいところだが、そんなことをすると法定速度の軽く四倍はスピードが出てしまう。高速道路とはいえ、日本の道路事情では本気を出せないのがこのクルーザーの残念なところか。とはいえ高速巡行では抜群の安定感だ。
『ICIS星蹟第二分室より着信です。応答しますか? 保留しますか?』
 ヘルメットに内蔵された通信補助装置の電子音声が、わたしの携帯に着信があったことを知らせてきた。携帯電話と連動していて、このように運転しながらでも通話することが可能だ。
「応答する」
 二秒ほどの間。
『――もしもし、セイラ捜査官』
「リスティか。どうした」
『新たな報告があります。現在バイクに乗車中かと思いますが、よろしいですか?』
「問題ない」
『はい――まずは警察のほうに連絡し、セイラ捜査官が例の現場に向かうことを伝えました』
「ふむ」
『そのとき聞かされたのですが、警視庁捜査一課の刑事が二名、現場に向かっているそうです。なので時間的にセイラ捜査官と現場で合流するかと思います』
「そうか。わかった」
『あの、これは室長からなのですが……本庁の刑事はICISのことをよく思わない傾向があるから、あまり波風立てないようにしてちょうだい、とのことです』
 要するにおとなしくしていろ、ということか。
 日本の警察特有の、縄張り意識というやつだろうか。特にICISは警察の上位機関だから、警察としては、我々が現場にいるとやりにくいという話を以前、詩桜里から聞いた。
「詩桜里のやつはそんなこと気にしてるのか? 彼女に伝えてくれ。わたしもそこまで大人げない行動はしない――」
『あ、はい』
「――ただし、売られたけんかは買う」
『セイラ捜査官……あの、この通話、室長も聞いているのですけど』
「む? それなら伝える手間が省けてよかったな」
『よくないわよっ!? あなたちゃんとわかってるの!』
「なんだ詩桜里、急に出てくるな。びっくりするだろう。事故でも起きたらどうするつもりだ」
『びっくりしたのはわたしよ! なんかあったとき謝るのはわたしなんだから、胃が痛くなるようなことはよしてよね!』
「わかった。帰りに胃薬買ってきてやる」
『そういう問題じゃない! ……はあ、もう……なんか疲れた』
「ふむ。栄養ドリンクもついでに買ってやろう。めっぽう高価なやつをな。感謝しろ」
『……もういいわよ。お願いだから下手な真似はしないでね』
「なにが『下手な真似』なのかいまいちわからんが……まあいい。了解した、と言っておこう」
 しばらく、応答がなかった。
『……もしもし』
「ん、今度はリスティか? 詩桜里はどうした」
『室長はたったいま退室されました……なんかお疲れの様子で』
「そうか。まあ、あいつが疲れているのはいつものことだ。気にするな」
 通話を終えると、いままで消音されていたエンジンの駆動音がわずかに響いてくる。もともと静かなエンジンだが、通話中はヘルメットの防音機構が働き、通話のみが耳に届く仕組みだ。
 本庁の刑事が二名……か。どういう人物たちかはわからないが、警察と合同で捜査に当たるのははじめてだ。
 詩桜里にはあんなこと言ったが、ここはひとつおとなしくしておこう。
 ――もちろん、相手の出方にもよるが。


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