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いま、その翼を広げて


Extrication-1

 日本が滅亡に向かっていることを、凜は話した。
 異種化した人間たちの写真を、悠に見せた。
 大人も子どもも、みんな。
 怪物に成り果て、死んでいった。
 誰が誰なのかまったくわからないから、墓も作れない。
 そもそも怪物になった人間は埋葬されない。
 産業廃棄物として「処理」される。
 悠は泣いた。
 涙のダムができるんじゃないかと思えるほど、激しく泣いた。 
 凜は言った。

「世界のために、犠牲になってくれ」

 驚く悠。
 凜は説明した。
 淡々と説得した。
 知り合いがみんな、異種化によって死んでしまう恐れがあること。
 それを防ぐためには、これ以上犠牲者を出さないためには、悠の肉体が必要だと言うこと。
 凜はさらに語った。
「奈々も真奈海も柊さんも小日向さんも綾瀬さんもセイラも、父さんや母さんや姉さん――もちろん惺も。みんな死んじゃうかもしれないよ?」
「――――っ!?」
 体を震わせる悠。
 彼女の涙は、すでに枯れていた。
 凜はとどめを刺した。


「――悠。世界のために、死んでくれ」


 やがて、悠はそれを受け入れた。
 凜は嗤った。
 光を失った瞳で、泣くように嗤った。


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