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いま、その翼を広げて


Extrication-15

 話は数日前にさかのぼる。
「斑鳩さん! DNA鑑定の結果が出ました」
 アジトにある研究室。室内の大部分が様々な医療器具や大型の精密機械で占められ、雑多な気配を醸していた。ケーブル類がのたうちまわっている足の踏み場もない床を縫うように歩き、斑鳩は研究員がいるモニター前へとやってきた。
 様々な情報が羅列されているモニターを見て、斑鳩が眉をひそめた。
「スズキくん。これ、機械の故障じゃなくて?」
「なに言ってるんですか。設計したのはあなたでしょうに。『万にひとつも故障の可能性はない。はっはっは』って豪語してたじゃないですか。……ていうか僕の名前鈴井ですって。いい加減覚えて――」
「真城惺と悠の血縁関係は否定……ふむ」
「……これを見る限り、まったくの別人ですよね」
 研究員鈴井は、名前を覚えてもらうことを半ばあきらめながら言った。
「戸籍にはそんなこと記載されてなかった。となると……んん? どういうことだ?」
 意味がわからない。しかしまあ、あの兄妹にはまだまだ知らない事実が隠されているのかもしれないね、と斑鳩は思う。なにしろ、彼らの父親はあの真城蒼一だ。
「しかしこうなると政府も困るだろうね。真城惺くんが悠ちゃんの身代わりにならないって言っているようなものだから。……まあけど、それを知りうる情報はもう政府にはないか。血液サンプルもデータも僕が拝借しちゃったし、わざわざ教える義理もない」
「政府はもう、真城惺本人を捕まえるしか手はないですね」
「惺くんは頭もいいみたいだし、霞さんが認めるほどの戦闘能力の持ち主だ。相当手強いよ? だいたい捕まえたところで、これだとなんの意味もない」
「……あの実は、もうひとつ気になったことがあって。これ、真城悠の完全な遺伝子情報ですけど」
 モニターの表示が切り替わる。
 それを数秒眺めた斑鳩は、再び眉をひそめた。
「スズキくん。これ、機械の故障じゃなくて?」
「なんでループしてるんですか。……斑鳩さんならわかりますよね? この遺伝子情報は明らかにおかしい。まるで――」
 その続きを、斑鳩が引きとった。

「まるで真城悠の遺伝子情報は、彼女が人間であることを否定している…………んんん? え、ちょっと待ってどういうこと?」


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