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いま、その翼を広げて


Extrication-41

 光の世界は激しいうねりをあげていた。うねりは奔流となり、空間を縦横無尽に蹂躙している。
 その中を、凜は漂っていた。上下左右のない空間で、上下左右に引っ張られながら。
 近くに悠が浮かんでいた。一糸まとわぬ裸身。金髪が光と一緒に踊っている。彼女の意識は、世界の奥底で眠っていた。
 凜は手を伸ばした。
「――ぐっ!?」
 しかし反発する奔流に巻き込まれて、徐々に離れていく。
「悠っ!?」
 こんなわけのわからない世界で、悠に自分の声が届いているのだろうか。それでも凜は、力のある限りもがき、悠の名を叫び続けた。やがて悠のまぶたが、ゆっくりと開いた。
「り……凜……くん?」
「悠っ!」
「だめ……こっちに来ちゃ、だめ……」
「悠、手を伸ばして!」
 凜がそうすると、悠も恐る恐る手を伸ばしてくる。
 あと少し。
 もう少し。
 そして手と手が触れあう。
 だがその刹那、光の奔流が暴れ出した。
 悲鳴をあげるふたり。だが凜は悠の手を、必死につかんでいた。
 光の奔流に意志があるように感じる。悠を渡さない、という強い願望。それが星核炉の願いなのか、なぜそんな願望を有しているのか凜にはわからない。
 手を離しそうになった。
 もう離さないと決めたはずなのに。
 ふたつの竜巻のような奔流が現れ、凜と悠を引き離そうと暴れ出す。いつ体が千切れてもおかしくないほどのうねり。ふたつの奔流はやがて収斂し、ひとつの巨大な奔流へと生まれ変わる。
「も、もう――離すものかぁっ!」 
 凜は最後の力を振り絞って、悠を引き寄せた。
 必死にしがみついてくる悠を、全力で抱きしめる凜。
「――よくやった、凜!」
 いつの間にか現れていたセイラが、ふたりを包んだ。凜と悠の楔となるべく、その身を挺して。
 光の奔流がさらに強まっていく中、三人は必死に耐えた。
 しかしつかの間、奔流が弱まる。
 三人が目を開けると、惺がいた。優しく微笑んでいるその表情を見て、三人は心の底から安堵した。
「――さあ、戻ろう」
 惺は三人に手を差し伸べる。 
 凜とセイラに背中を押された悠が、その手を取った。
 惺の能力は、この光の世界の「出口」を知覚している。四人はまるで魚のように自由に泳ぎながら、「世界」の果てを目指した。


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