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いま、その翼を広げて


Interlude02-2

 警視庁捜査一課のオフィスは、夜も二十時を過ぎると静かだった。昼間の喧々囂々とした雰囲気の残滓はほとんど残ってなく、静かな時間が流れている。
 立花は自分のデスクに着き、ノートパソコン上に表示された資料を見返していた。ICIS星蹟第二分室から送られてきた田中剛に関する捜査資料。これは最終的にリスティが書類にまとめたもので、今日の捜査会議で発表された。
 有用な情報ではあったが、堀江美代子が奇っ怪な状況で死亡した例の事件は、暗礁に乗り上げたこと意味している。重要人物である田中剛が、実在しない人物であることがほぼ確定したからだ。
 現在も彼の行方はわからない。彼が例の製薬会社の研究所を退所した日からの足取りが、警察の執念深い捜査でもまったくつかめなかった。資料には田中剛の正体に関する情報はなく、これ以上捜査を続けるのは困難だった。
 ――田中剛は堀江美代子の死に、かなり深いところまで関わっているはずだ。直接関わってないにしても、絶対になにかを知っている。
 直感がそう告げていた。立花は刑事としてまだ若手の部類だが、その能力の高さや勘のよさはベテラン刑事に引けをとらないほど研ぎ澄まされている。
 ――しかし、いまは堀江美代子の件よりも厄介な事件があるな。そちらもどうにかしなければ。
 現在、堀江美代子の不審死事件よりも警察を悩ませているのが、一連の殺人事件だった。多摩市と飯能市で起こった事件を皮切りにして、今日までに埼玉県所沢市、川口市、東京都足立区などでも同様の事件が頻発した。相変わらず被害者は性別年齢問わず、接点はなし。そして遺体が著しく損傷している点も同じ。
 動機や目的がまったくもって不明瞭ではあるが、同一犯の犯行として認定。久しぶりに警察庁広域重要指定事件に指定された。
 不意に、ノートパソコンにポップアップウインドウが表示される。メールの受信を知らせるものだ。
 メールソフトを起動し、受信箱を確認する。
「…………?」
 立花は首を傾げた。
「どうしたの?」
 声に反応して立花が顔を上げると、コーピーカップをふたつ持った沢木が立っていた。彼女は片方のカップを立花に手渡す。立花は短く礼を言った。
「メールを受信したんだが、どうも妙で」
「妙?」
「これは念のために作った、俺の個人用アドレスだ。外部に知らせることはほとんどない。はじめて見るアドレスからのメールで、添付ファイルがひとつあるだけで差出人の名前も件名もない。本文は……とにかく見てみろ」
 沢木がディスプレイをのぞき込む。
 本文にはたったひと言。
「『塩の中に混ざった砂糖』?」
 沢木が読み上げる。本文にはそれ以外なにも書かれていなかった。
「なにこれ。いたずらメールじゃ?」
「そうとは限らんな。このフレーズ、どこかで聞いた覚えはないか?」
 にやりとしている立花は、メールの差出人や意図にすでに見当がついていた。
「あ! アルテイシア捜査官!」
 堀江美代子の自宅マンションで会った彼女が、そんな発言をしていたと思い出す。
「じゃあ、差出人はアルテイシア捜査官で、その添付ファイルは例のデータってこと?」
「おそらくな」
 立花とセイラは互いに連絡先を交換したが、このメールアドレスは教えてなかった。しかし優秀な彼女のことだから簡単に調べられるだろうと当たりをつける。念のため添付ファイルにウイルスチェックを走らせるが、問題はないようだった。
「ちょ、ちょっと待って、秀あ――じゃなかった、立花警部。これ、正規のルートの情報提供じゃないですよね?」
「そうなるな」
 データを解析できたらこちらにも送ってくれと、立場上、いちおう立花はセイラに頼んだ。しかしその要請が果たされる可能性は低いと、彼は沢木に説明していた。ICISと警察は協力関係にあるが、意外にもそのあいだに屹立する壁は高く厚い。
 これは、いわばセイラが立花に宛てた私用メールだ。田中剛に関する捜査情報のように、警察とICISという組織はあいだに関わっていない。しかも匿名で、立花と沢木以外にはわからないような内容。セイラが個人的に立花の要望を叶えただけともいえる。
「どんなに有用な情報でも、これでは捜査では使えませんよ」
 毅然とし敬語になった沢木は、立花の親しい人間としてではなく、ひとりの刑事として同僚に尋ねている。もちろん沢木が筋の通らないことが嫌いなのは、立花もよく知っていた。その態度は恋人である立花に対しても決して変わらない。むしろそういうぶれない部分が沢木の魅力だと、立花は常々思っていた。
「そんなことは百も承知だ。だが沢木警部補、あなたは見たくないのか? 堀江美代子が隠していたパンドラの箱を」
 立花もひとりの刑事として答える。
「それは……」
「責任はわたしが取る。……ここだとあれだな。別室に移動しよう。悪いが九条警視を呼んでくれるか」
 立花はノートパソコンを持って席を離れる。
 数分後、がらんとした会議室の隅に三人が集まった。
 立花と沢木、そしてふたりの上司である九条銀次警視。現捜査一課課長で、立花にエースの座を引き渡すまでその立場にいた傑物だ。
 四十六歳。一七〇センチほどの身長でやや細身の体型。オールバックにしたダークグレーの髪で、その高い知性を表すように額は広い。着用しているグレーのスーツは髪の色と相まって、とてもなじんでいる。孤高の一匹狼のような鋭い存在感を全身から放っていた。
「沢木くんから話は聞いた。ルールに反する代物とはいえ、中身を確認せずに削除するのはもったいないか」
 容貌の印象よりもだいぶ柔らかい声音。温かみのあるクラシックギターのような響きだった。
「九条警視! 嘘でもいいから、せめて一度は止めてください」
「おい、沢木……」
 やれやれといった様子で、立花は沢木を見た。彼女も同じくやれやれといった感じで小さく肩を落とす。しかしすぐにあきらめたのか、大きくため息を吐き、「好きにしてください」とつぶやいた。そんなふたりのいつもの光景を、親のような気持ちで見守る九条警視。
「立花、俺が頭の固い上司だったらどうするつもりだったんだい? そんなものは削除しなさい! ICISにも抗議だ! とか言い出したら」
「そんなことしない方だからお呼びしたんですよ」
「ふ。まあいい。さっそくはじめてくれ。パンドラの箱を開けようじゃないか」
 長机の上、立花のノートパソコンにつながれていた大型ディスプレイが、パンドラの箱の中身を表示した。
 日本語で書かれた文字列が表示される。
「これは……日記かな?」
 と、九条警視。
「たしかに、彼女の部屋から日記のたぐいは見つかりませんでしたね。それがこうして隠されていたことは――」
 三人はディスプレイを注視する。データは純粋なテキスト形式だった。容量はとても少ない。データを発見したときに、容量が大きいとセイラが言っていたことを思い出し、立花は疑問を抱いたが、ひとまずそれは置いておくことにした。
 日記は去年の三月から始まっている。明らかに無関係だと思われる部分は読み飛ばした。


 3月13日
 例の研究機関から検査結果が届いた。
 どうやら私は不妊症らしい。「自然に妊娠することは不可能ではないが、極めて困難」だそうな。
 やれやれ。
 うちと関連する研究機関が新しいDNA検査を開発。その試験運用にたまたま応募しただけだった。それでこんな事実が判明するなんて、運がいいのか悪いのか。
 将来、子どもは欲しい。
 まあ、その前に結婚相手を探さないと。そういえばもう6年も彼氏がいない(年数を数えたら、ちょっと衝撃的だった)。
 ところで大学の同期だったNが結婚するらしい。
 大学時代、「結婚なんて、わざわざ男に束縛されに行くようなものじゃない!」と豪語していたあの子だ。
 久しぶりに彼女のSNSを見たら、彼と仲良く写っている写真が大量にアップされていた。
 もう幸せすぎて脳がとろけそう、って顔していた。あの子のあんな顔、初めて見た。
 どういう風の吹き回し?

 んー……
 私も、合コンでもしようかな。
 でもリケジョってどうなの? 人気あるの? 私、女子力そんな高くないけど大丈夫?
 今度友達に訊いてみよう!

「女性の日記なんてはじめて読んだよ……そこはかとなく罪悪感が。いいのかね?」
「警視、我慢して最後まで読みましょう。立花警部はまったく微動だにせず読んでますよ」
「立花くんとは精神構造が違うんだよ。根本的に」
「……ふたりとも、黙って読んでください」
 
 4月10日
 新しいプロジェクトが始動。
 わが社が誇る遺伝子改良技術をさらなる高みへ到達させるらしい。
 なんとびっくり、わたしがプロジェクトの主任を任された。
 結果を残せれば、大きなキャリアになる。
 でも、私にできるかな?
 研究に集中すると、まわりのことが見えなくなっちゃうのは自覚している。
 ほかのことにも手がつかなくなる。
 そして研究に没頭中は女子力50%ダウン(当社比)。化粧なんて忘れて出社するのはざら。ずいぶん前になるけど、左右別々のくつ下を履いていったこともある。
 むむむ。
 気をつけないと。

 そういえば、数日中に新しい人材が補充されるらしい。
 30代半ばの男性。日本人。聞いた話だと、アメリカのジェリス製薬会社の研究所にいた人らしい。ジェリスといったら世界でも5本の指に入る大企業だ。優秀な人なのは間違いない。ちょっと楽しみ。
 ……あれ。
 これって出会いの予感?
 いちおう、化粧はしっかりしておこう。

 4月14日
 例の新しい人がやってきた。
 名前はT。
 理系ではめずらしいさわやかな人柄。
 長身で手足が長いのは合格。
 でも残念。顔は私的に不合格。
 なんてゆーか、惜しいんだよね。悪くはないんだけど、美形でもない。まるで印象に残らない。
 ……あれ、私ってこんな面食いだったっけ?
 まあいいか。
 たぶん女子会で彼の写真を見せて、「この人と1回だけセックスできるか?」という話になったら、七割八割くらいは「ちょっと難しいかも」って答えそう。根拠はない。なんとなくのイメージ。
 でも頭はよさそうだから、そこは期待。

「この『T』なる人物が、田中剛かしら」
「そうだろうな」
「……警視、どうしました?」
 九条は困ったように首を振った。
「女性の日記怖い。なに、こんな明け透けに同僚のこと書くの?」
「まあ、日記ですから。ブログと違って、基本誰かに見せるものじゃないですし」
 沢木が答える。
「まさか、沢木くんも――」
 密かに上司の悪口とか日記に記してないよね? と視線で問いかけた。
「か、書きませんって」
「警視、沢木は日記を書き続けるような性格じゃありません。学生時代、ブログを開設しても二週間で放置するようなやつですから」
「な、なんでそんな細かいこと覚えてるのよ!」
「付き合い始めて、はじめてけんかしたときだったな。最後の日記は俺への悪口だった。ブログを見た同級生に散々からかわれたから、よく覚えてる」
「ちょっ、ちょっと!」
 そんなことここで言わなくてもいいでしょう! と沢木は慌てるが、立花は涼しい顔をして受け流した。
 ふたりの「夫婦漫才」を見て、「若いってのはいいねぇ」とでも言うように微笑む九条。彼はもちろん、立花と沢木が学生時代から付き合っていることを知っている。
「ふたりとも、先に進めましょう。どうやらここからが本題のようだ」
 九条と沢木の瞳に真剣さが戻る。

 4月19日  
 Tはとんでもない人物だった。
 賢い、なんてレベルじゃない。
 私が今まで出会った中でいちばん頭がいい。知識の豊富さはもちろん、機転の利かせ方、着眼点、洞察力どれも常人離れした領域で高い。
 彼は天才だ――1週間も経たないうちに、同僚の誰もがそう認識した。いまは私のプロジェクト専任だけど、ほかの部署からもラブコールが届いている。

 Tがアメリカから持ってきたという「神の遺伝子」なる代物が、今後の研究を左右するのは間違いない。
 細胞老化の抑制から始まり、テロメアの無限分裂、アポトーシスの回避、オートファジーの無制限制御――神の遺伝子の特性をあげればきりがない。
 簡単にいって、これまでの生物学をひっくり返し、今後の生物学を大躍進させる代物。薬品にうまくその特性を流用できれば、がんやエイズの特効薬を作り出すのも夢ではない。薬品だけでなく、医療技術全般に応用が利く、まさに夢のような存在だ。
 つまり神の遺伝子を用いた研究は、我が社の命運どころか世界の在り方を変える画期的なものになるはずだ。
 Tいわく、神の遺伝子をうまく研究に活用できればノーベル賞を100回受賞するのも夢ではない、という。

 7月8日
 Tから持ちかけられた話。
 生命倫理を無視したとんでもない提案だ。
 けど、不妊治療の研究も兼ねてと言われて迷った。まるで不妊で悩んでいることを知っているようなタイミング。もちろん誰にも言ってないから、Tが知るよしはないのだけど。
  結局、私は首を縦に振った。
 もちろん、研究者としてどうなるのか知りたい、という欲求も多分にあったのは否定できない。

 7月17日。
 私のプロジェクトと平行して、Tの提案した研究を行うことにした。
 その事実を知っているのは、私とT、直属の上司に当たるU、さらに研究所幹部のHの4人のみ。
 上層部の大半が知らない極秘研究。
 ばれたら始末書では済まされないと思う。

 けど、やる。
 未来の人類のため、医療技術の進歩に貢献するための研究、なんて偉そうなことは言わない。
 これは自分のためだ。

 9月11日
 受精卵の作成はうまくいった。
 あとは私の子宮内部に移植するだけ。

 9月18日
 移植成功。
 現状では問題なし……のはず。
 経過観察。

 10月31日
 陽性反応。
 やった!
 まさか1回で成功するとは思わなかった。

 自然な生殖行為ではない。
 でも私のおなかの中に、新しい生命が宿った。
 なんか嬉しい。

 12月6日
 おなかの子は順調に育っている。
 研究の秘匿性を考えて、産婦人科には通ってない。けど、出産まではTがいろいろと面倒を見てくれる。Tの知識は専門の医者に引けを取らない。
 いろんなところを見られるのは恥ずかしいけど、Tの知識と技術はこの研究になくてはならないから、ここはがまん。

 12月11日
 あー忙しい。
 いつの間にかもう師走?
 そろそろ妊婦に残業させるのはやめてよね。
 まだおなかは目立たないけど、妊婦なのは変わらないんだから。
 Uに相談してみよう。

 12月28日
 仕事納め。
 研究所の面々と忘年会。
 もっとも私は今、お酒飲めないし、もともと飲めないけど。

 お酒の入ったTはいつもより饒舌で楽しそうだった。
 …………。
 不覚というか。
 私、Tに惹かれているみたい。
 最近、そう意識しはじめた自分がいる。

 2月5日
 私は健康そのもの。
 けれど妊娠から4ヶ月は過ぎているのに、おなかが膨らまない。
 まさか……と思いつつ、検査。
 Tいわく、赤ちゃんは無事らしい。
 安堵。

 受精卵に神の遺伝子を組み込んで、人工的に着床させた赤ちゃん。
 やはりというか、一般的な妊娠とは経過が違うらしい。
 ふつうの産婦人科に通ってなくてよかった。この状況をどう説明すればいいのか見当がつかないし。

 月 日
 その日、研究所にTから辞表が届いた。
 意味がわからない。一身上の都合ってなに? 研究は?

 UとHが彼の自宅マンションに向かうと、もぬけの殻だったそうだ。

 どういうこと?
 失踪?
 なんで――

 日記はここまでだった。
 誰かがごくりとのどを鳴らした。
 静寂を破ったのは、立花のスマートフォンだった。
「……アルテイシア捜査官?」
 ディスプレイにはそう記されていた。予想だにしないタイミングで、さすがの立花も驚きを隠せないでいた。
 沢木と九条にアイコンタクトを送る。ふたりは神妙にうなずいた。
『ごきげんよう、立花警部』
 セイラのよく通る声。立花は、すべてを見透かされていそうな感覚を覚えた。
「どうしました?」
『そろそろ例のものを確認したのではないかと思って。塩の中の砂糖』
「やはりあなたの仕業でしたか。ちょうどいまさっき全部読み終えたところですよ」
『ああ、敬語は使わなくていい。いつもどおりで。近くに誰かいるか?』
「沢木と、上司の九条警視が。ほかには誰もいない」
『ふむ。ふたりも一緒にパンドラの箱をのぞいたのだな。まあ予想どおりだ。ふたりにもわたしの声が聞こえるようにしてくれ』
 スピーカーモードに切り替える。
『――九条銀次警視。あなたとははじめてだな。ICIS日本支部星蹟第二分室所属、セイラ・ファム・アルテイシア特別捜査官だ。電話越しで申しわけないが、よろしく頼む』
「ああ、こちらこそ。きみの噂はふたりから聞いているよ。それで、きみがこのパンドラの箱を立花に送った理由は?」
『彼にはそれを知るにふさわしい権利を持っていると、わたしが独自に判断したからだ。もちろん、あなたや沢木警部補にも』
「独自の判断ねえ……」
 不思議そうにあごをなでる九条。ICISとは何度か共同で捜査した経験があるが、セイラほど「自由」な捜査官ははじめてだった。
『強いて言うなら直感だ。知らせるべきだと、わたしの第六感が告げた。ふふ、スタンドプレイが過ぎるとは承知しているさ。ただ、立花警部とは約束したからな。わたしはそれを個人的に果たしただけのこと』
「あれは約束というか……だめもとのお願いというか。まさかこんなかたちで叶えられるとは思ってもなかったが」
『だからこそ、私用のメールで送らせてもらったんだ。以降、その日記をどうするかはそちらに任せる。陰で捜査に役立てるなり、闇の底に葬るなり好きにしてくれ』
「……いくつか質問が」
『なんなりと』
「データを見つけたときに容量が大きいと言っていたが、この日記は五〇〇キロバイトもない」
『それについては説明する必要があるな。まず、暗号化されたデータのほとんどは、膨大な量の動画や写真、音楽ファイルなどで占められていた。それら全部は堀江美代子とは無関係だった』
「その中にこの日記が?」
『そういうことだ。隠した本人じゃないと見つけられないように紛れ込ませてあった。それから、その日記は原本をそのままコピーしたものではない。わたしが記憶した文章を、あらためてテキストにまとめたものだ』
「き、記憶?」
『なにも難しいことじゃない。解析後、データの原本はICISのデータバンクに保存された。それを直接コピーするのは難しくてな。上の許可なんて下りないだろうし、無理やりにでもハッキングしようものなら、直属の上司の胃に穴があく』
 顔を見合わせ、苦笑する立花と沢木。セイラの上司、自分たちの同級生である紅い髪の才女がおなかを押さえているさまが思い浮かんだ。
「……やり方はどうであれ、感謝しよう。ところで、その上司はこの件のこと知っているのか?」
『いや、知らせてない。……ふむ。知らせたらどうなるか試すのもおもしろそうだな』
「やめてあげてくれ。この件はわたしたち三人の心の内にしまっておく。それで、アルテイシア捜査官、神の遺伝子とはなんだ?」
『申しわけないが、この場でそれを話すことはできない。とりあえず、相当にろくでもない代物だと認識してくれれば問題ないだろう』
「結局のところ、田中剛と堀江美代子は神の遺伝子とやらを用いてなにを生み出そうとしたんだ? ただの赤ちゃんでないことはもはや明白だが」
『立花警部、あなたはおおかた予想ついているんじゃないか? ――おそらく、人外の怪物だ』


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