わたしの腕の中で慟哭する月城くん。そんな彼の姿に、わたしは既視感を覚えていた。
放課後の屋上。月城くんに追い詰められ、泣き崩れたわたし。あのとき、わたしは天宮くんの胸でいつまでも慟哭していた。
濡れた服の上から伝わってくる、月城くんの体温が愛おしい。いつまでもこのまま抱き合っていたいと、切実に思った。彼の気が済むまで、わたしはこうしていようと決めた。
――それからどれくらいの時間が経過しただろう。
月城くんの嗚咽がやがて収まり、わたしの胸から顔を上げた。
目と目が合う。月城くんの瞳は、すべての迷いや苦しみを涙と一緒に洗い流したような、清浄な光をたたえていた。
もう、彼は大丈夫。絶対に立ち直れる――そう確信させるほどの強さを感じた。
それから先、言葉はもういらなかった。お互いの顔が近づいていき、やがて唇と唇が重なる。
意思が通じ合った最初のキス。
それは、しょっぱい塩味だった。