高台にある小学校へセイラたちがたどり着いた頃には、校庭に多くの人々が避難していた。
人々の悲鳴があがる。
校庭の端から、眼下の街並みが見下ろすことができた。
しかしいま、「街並み」なんてものはない。冥界から召喚したようなどす黒い奔流がうねりをあげて、文字どおり眼下の街をまるで容赦なく破壊している最中だった。
流された建物と建物がぶつかり、大きな破砕音を立てている。大型トラックですら、おもちゃのように浮いていた。
「津波の到達が早い! 震源地が近いのか……っ!」
セイラが悔しそうにつぶやく。
と、惺が苦しそうに膝をついた。
「……っ……人が……たくさん流されて……っ」
惺の「能力」は、離れている人々の思念や感情を読みとることができる。目には見えなくとも、津波に飲まれていく人々の絶叫や悲鳴など、惺にとっては手に取るようにわかった。
しゃがみ込んで震えていた真奈海が、ふらっと立ち上がる。まるで幽霊のような足取りで歩き出した。
「真奈海、どこに行くつもりだ!」
「家族がっ……みんながっ……!?」
「落ち着くんだ。この状況では戻れない!」
「――っ」
再び力なくしゃがみ込む真奈海。
彼女の家も海に近い場所にあった。しかし地震直後からスマートフォンはまるで通じず、安否は不明。
誰にもどうすることもできなかった。