――そして、あっという間に7年が経った。
7年という月日は長いように見えて、実際経過してみるとかなり短く感じる。
僕はアラフォーに差しかかり、もう決して若くもない年齢となる。35歳を過ぎてまったく運動しないと腹が出るとは事実だった。ことあるごとに「デブ」とナオちゃんに言われている。そんな彼女もすでに三十代に突入していたけど、外見的にはそんなに変わりないように見えた。
失踪宣告による死亡認定という制度がある。生死不明のまま7年が経過すると、その失踪者は死亡したと見なされるらしい。
結局、さっちゃんの情報や痕跡はまるで見つからなかった。
そしてさっちゃんが消えてから7年が経過したその日、彼女は法的にも死亡した。
後日、僕とナオちゃんは婚姻届を提出した。
その日の夜、ふたりだけのささやかなお酒の席で、僕はナオちゃんに訊いてみた。
「ナオちゃんって僕のこと嫌いじゃなかった?」
向かいに座ってグラスを傾けていた彼女が、ぶすっと表情をしかめる。なにをいまさら、などと言うような生温かい視線を向けてきた。
「嫌いじゃなくてむかつく、ってずいぶん前に言わなかったっけ。だいたい、なんでこのタイミングでそんなこと訊いてくるの。馬鹿なの?」
容赦のなさは何年経っても変わらない。
「僕なんかでよかったの?」
「だからつまんないこと訊くな。……さっちゃんの手紙にはさ、あんたのことよろしくお願いしますとか書いてあったけど、それはあんまり関係ないの」
「え?」
「わたしはわたしの意志であんたと結婚したの。それ以上でもそれ以下でもない。……あんたのこと愛してるからだよ」
全身に熱が目頭のあたりに込みあげてくるものがあって、それを誤魔化すためにウイスキーのロックをのどに流し込んだ。
余計に体が熱くなった。
「もう、いい歳なんだから泣かないでよ」
朗らかに笑うナオちゃんを前に、僕は澎湃として泣いてしまった。
どうして――
どうしてこの幸せに満ちた場所に、さっちゃんはいないのか。