心の声は聴こえない– category –
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ナオちゃんと結婚して1年が経過しようとしていた頃、僕は病院の個室にいた。窓は開け放たれていて、秋の匂いを運ぶ穏やかな風が室内に入り込んでいる。 ベッドの上に... -
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――そして、あっという間に7年が経った。 7年という月日は長いように見えて、実際経過してみるとかなり短く感じる。 僕はアラフォーに差しかかり、もう決して若く... -
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それからさらに1ヶ月以上が経ち、年が明けた。 さらに2ヶ月、3ヶ月――半年と、時間は光速のような速度で流れていく。 相変わらずさっちゃんは見つからない。たぶんこ... -
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さっちゃんの手紙を見せると、さすがに警察も重たい腰を上げて動いてくれた。地元の住民や消防などと協力して、手紙のあった近辺を捜索してもらう。 でも、「なに」... -
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まさか再びこの地に足を踏み入れるとは思ってなかった。 路肩に停車し、車を降りる。深い自然の匂いは、あのときと変わっていなかった。ただしすでに11月の半ば。紅... -
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オーナーに直接電話して事情を説明すると、今日は休めと言ってくれた。オーナーにはさっちゃんの現状や様子など、ほとんどを話しているから理解が早い。その後、文字... -
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あっという間に時間は過ぎ去っていった。 長いようで短かった休日は終わり、僕は日常に戻る。無理やり休んだしわ寄せなのか、雪崩のように仕事がなだれ込んできた。... -
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いつの間にか10月になっていた。 かなり無理やりだけど、1週間以上の有休を取った。最初は渋っていたオーナーだったけど、さっちゃんの様子を少しだけ話すとさすが... -
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夏になった。世間はお盆休みで、僕も休みだった。その日の夕食は僕がめずらしく腕を振るい、ナオちゃんにも来てもらっている。 料理に舌鼓を打っているさなか、その... -
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その後、思い切って車を買った。ホンダのオデッセイ。子どもが何人かできても余裕があるように、大きめの車にした。もちろん新車だ。 晴れた休日の昼下がり。ウッド...