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第四場 第二場

2020 4/03

 入れ替わり舞台上前方が照明に照らし出される。
 背後では扉のセットが片付けられる。
 隼人、西園寺、東郷、藤枝登場。

藤枝「大人しく投降しろ、隼人!」

隼人「やだね!」

東郷「思ったとおりだ。あんたかなりやるな」

西園寺「それはどうも」

 東郷、西園寺に襲いかかる。
 藤枝も隼人に襲いかかる。
 乱闘。
 しかし、西園寺が背後を取られ、東郷に捕まる。

東郷「動くな」

 東郷、拳銃で西園寺を脅す。

西園寺「くそっ、離せ!」

東郷「ふん。油断大敵だ……おい、ハル!」

ハル「なんだい田中くん……いや、東郷清十郎くんだったかな」

東郷「俺たちの正体に気づいたか」

ハル「よくも騙してくれたね」

東郷「悪かったな。監視カメラにここの映像写ってるだろ。小夜子のお嬢さんに見せてやってくれ。あんたが出てこないと、西園寺が死ぬぞって」

ハル「小夜子様はもうこの屋敷にいない」

東郷「AIのくせに嘘をつくのか? だいたい、地下への通路は一本道なんだ。俺らに気づかれず地上に出られるわけねえだろ」

藤枝「ほらほらハルちゃんよ、早くしないと執事さんが死ぬぞ」

西園寺「ハル、ダメだ!」

ハル「君は大事な友人だ。見過ごすことなんてできない」

西園寺「ダメだ! それでは小夜子様が!」

東郷「うるせえ!」

小夜子「(舞台袖から)待ってください!」

 小夜子登場。
 それを追って龍一と史郎登場。

史郎「待って、小夜子ちゃん!」

龍一「小夜子さん! 出ちゃダメですって!」

東郷「よお。これで役者はそろったな」

龍一「くそっ……」

藤枝「動くんじゃねえぞ」

東郷「龍一、発想はよかったが詰めが甘いな……真城小夜子!」

小夜子「は、はい」

東郷「こっちへ来い」

 小夜子が前に出る。

隼人「小夜子ちゃん! 行っちゃだめだ!」

西園寺「小夜子様!」

小夜子「西園寺、いいんです。テケスタのみなさん、本当にありがとうございました。そしてごめんなさい。わたしのせいで、こんな危険な真似を」

 小夜子が前に出る。

西園寺「小夜子様!」

小夜子「いいの」

 小夜子、東郷に近づく。

東郷「そう。それでいい」

小夜子「あの、最後にお願いが」

東郷「あん?」

小夜子「西園寺に伝えたいことがあるんです。ふたりにしてくれませんか?」

東郷「……いいだろう。ただし二分だ」

小夜子「ありがとう」

東郷「隼人!」

隼人「え?」

東郷「代わりにこっちに来い」

隼人「ええっ、俺!」

東郷「早くしやがれ!」

 隼人、恐る恐る東郷のもとへ。
 西園寺と隼人、人質が入れ替わる。
 西園寺、小夜子の元へ。

西園寺「小夜子様……申し訳ありません!」

小夜子「もういいの西園寺! もうわたしをめぐって争うのはやめてください……わたしが死んで解決するのなら……それで……すべて終わったら、ゆっくり休んでくださいね」

西園寺「小夜子様!」

小夜子「西園寺、こんなときにあれですけど、最後に言わせてください」

西園寺「小夜子様?」

小夜子「わたしは綾瀬貴之様との結婚は望んでいません」

西園寺「そ、それは」

小夜子「わたしは物心ついたときから、ある人をずっとお慕いしていました」

西園寺「え?」

小夜子「わたしが愛しているのは……啓ちゃん……目の前にいるあなただけです!」

西園寺「小夜子様!」

小夜子「ごめんなさい……西園寺、あなたに対する気持ちは、たとえ天国にいても変わることはありません……さようなら、啓ちゃん」

西園寺「小夜子さ……小夜ちゃん!」

東郷「タイムオーバーだ! じゃあな、嬢ちゃん!」

 東郷、引き金を引く。
 響く銃声。
 しかし、小夜子を突き飛ばした西園寺が撃たれ、その場に倒れる。
 叫んで西園寺にすがりつく小夜子。
 龍一、すかさず銃を取り出し、東郷に向け発砲。
 肩を撃たれ、よろめく東郷。

東郷「ぐあっ! 貴様……!」

藤枝「東郷さん!」

 東郷と藤枝に銃を向ける龍一。

龍一「動くな!」

藤枝「龍一てめえ、どういうつもりだ!」

龍一「黙ってろ!」

東郷「てめえ……銃を使いやがったな……」

龍一「あんな……最後の最後まで人に気遣いを忘れない素敵な子を……死なせるわけにはいかない! あんたたちは大人しく退いてくれ!」

小夜子「啓ちゃん、啓ちゃん!」

西園寺「さ、小夜子様……ご無事ですか……?」

小夜子「わたしのことはいいの! もうしゃべらないで!」

西園寺「はは……よかった……ご無事のようだ……小夜子様……最後にわたしも……お伝えしたいことがあります」

小夜子「もうしゃべらないで!」

西園寺「小夜子様……実は俺、嘘ついてました。俺は小夜子様の結婚を心から祝福することは……できません」

小夜子「啓ちゃん?」

西園寺「お、俺も小夜子様……小夜ちゃんのことを愛しています……だから」

小夜子「啓ちゃん!」

西園寺「すいません……最後の最後になってしまって……でも、伝えられて……よかった」

小夜子「最後だなんて言わないで! 啓ちゃん!」

西園寺「小夜ちゃん……さよう……なら」

小夜子「け……啓ちゃん!? いやあぁぁぁっ!」

龍一「そんな……」

史郎「うう……こんなことって!」

隼人「くそ……!」

東郷「はっはっは! はっはっは! こりゃ傑作だ! どこのB級映画だ」

龍一「だ、黙れ!」

小夜子「啓ちゃん……もう結婚も断る……だから……お願い! わたしはあなたじゃないとダメなの!」

  西園寺、むくっと起き上がる。

西園寺「本当ですか小夜子様?」

 その場にいる全員が驚く。

小夜子「け……啓ちゃん……?」

龍一「死んだんじゃ?」

西園寺「あ、あれ……?」

 西園寺、胸元からロケットを取り出す。
 ロケットに銃弾が突き刺さっている。

西園寺「まさか……これが?」

龍一「そんなバカな」

藤枝「じょ、冗談だろ?」

隼人「映画みたいだ」

小夜子「啓ちゃん……啓ちゃん!」

西園寺「小夜ちゃん!」

  抱き合うふたり。

東郷「くくっ……こりゃ、傑作を通り越して……」

 佐倉登場。

龍一「さ、佐倉さん?」

佐倉「どういうことなの、これは? ちょっと東郷さん! なんであなた撃たれてるの!」

東郷「希美ちゃんか。来るのが遅せえよ。手癖の悪い弟子にやられた」

佐倉「な、なにを言って……」

東郷「希美ちゃん、ボスに報告だ」

佐倉「え?」

東郷「いろいろイレギュラーなことはあったが、任務は完了した、と」

藤枝「え?」

東郷「だってそうだろ。今お嬢ちゃんは、結婚は断るって言ったんだぜ。おい、クソ人工知能! 聞こえてるんだろ!」

ハル「まさか、クソ人工知能とはボクのことを言ってるのか? 君ほど口の悪い男ははじめてだ」

東郷「さっきのお嬢ちゃんの言葉、ちゃんと聞いていたか?」

ハル「当然だ」

東郷「ちゃんと記録として残ってるな?」

ハル「もちろん」

佐倉「東郷さん……まさか!」

東郷「そのまさかだ。聞いてのとおり、真城小夜子と綾瀬貴之との婚約は破棄されたも同然だ。本人が断るって言ってるんだからな。記録された音声を証拠として提示すれば先方も信じるしかないだろ。よって、俺たちの任務は完了した」

藤枝「いいんすか?」

龍一「東郷さん!」

東郷「龍一、俺は疲れた。もう帰る」

龍一「東郷さん……」

東郷「最初に言っただろ。俺たちも好きで人を殺してるわけじゃねえ。理由がないのなら誰も殺さないさ、と。もはや俺たちに、その子を殺す理由も必要性もねえ」

史郎「じゃあ小夜子ちゃんは!」

東郷「ふん。せっかく助かった命だ。せいぜい大事にしな……辰巳、行くぞ」

藤枝「ちょっ、待ってくださいよ!」

 東郷と藤枝退場。

隼人「ねえ、これってさ……」

史郎「俺たち、小夜子ちゃんを守れたの?」

龍一「そうだな……一時はどうなることかと思った……けど、これでよかったんだ、きっと」

小夜子「みなさん!」

西園寺「あんたたちには世話になった! 本当にありがとう!」

ハル「ボクからもお礼を言わせてくれ。どうもありがとう」

龍一「いえ……」

佐倉「小夜子さん……その、本当にごめんなさい」

小夜子「もういいんです」

西園寺「小夜子様……綾瀬貴之様との結婚、本当に断るつもりですか?」

小夜子「……はい。貴之様には謝りに行きます。土下座でもなんでもして、啓ちゃんとのこと、許していただきます」

西園寺「秋彦様は」

小夜子「お父様も……もちろん説得します。啓ちゃん、手伝ってくれるわよね」

西園寺「はい!」

 音楽が流れ始める。

史郎「ハル? この音楽は?」

ハル「小夜子様は守れた。怪我人は出たけど、誰も死ぬことなく大団円を迎えた。さらに小夜子様と西園寺も結ばれたようだ。映画でいえばこれは、ハッピーエンドというやつではないかな。ハッピーエンドは盛大に盛り上げるべきだ」

隼人「こいつ……わかってるじゃないか」

龍一「さて、いろいろあったけど」

隼人「小夜子ちゃんは守れたし」

史郎「小夜子ちゃんと西園寺さんも結ばれたし!」

佐倉「いちおう、任務も達成した……ことにしておきましょう。ちょっと強引だけど」

龍一「チーム『テケスタ』!」

テケスタ「作戦完了!」

 音量が大きくなっていく。
 暗転。
 突然、音楽が止まる。
 同時に明転。

史郎「あれ? 小夜子ちゃんと西園寺さんが結ばれた!?」

龍一「それがどうした?」

史郎「そんな……そんな」

隼人「まさか史郎、気づいてなかったの?」

史郎「ふたりが……そんな関係だった……この作戦が成功したら……小夜子ちゃんに告白しようと思ってたのに! 嘘だぁっ!」

隼人「あーあ、哀れな史郎」

佐倉「ほっといてあげたら?」

龍一「そうですね」 

史郎「でもしょうがない。うん、まだ希美さんがいるし!」

隼人「切り替え早いな」

龍一「史郎、それ節操がないって言うんだぞ」

史郎「いいの!」

佐倉「盛り上がってるところ悪いけど、三人とも始末書提出よ。期限は明日!」

隼人「ええっ、少し休憩を」

佐倉「認めません!」

龍一「仕方ない。行くぞ、おまえら!」

テケスタ「おう!」

 暗転。
 再び音楽が流れ始める。
 明転。
 エンディング(ダンス)とカーテンコールへ。


<完>


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