「星蹟島だって……!?」
「ああ、間違いない。スマートフォンをパソコンにつないだままだったのが功を奏したな。かなり細かく逆探知できた」
ノートパソコンに星蹟島の地図が表示されていて、その一部分で赤い点が点滅している。
凜が電話をかけてきた場所。セイラは惺が通話していたわずかな時間のあいだに、信じがたい速度で逆探知を試み、結果を出してきた。
「悠も一緒らしいけど……なんで凜と?」
本来、ICIS捜査官でない惺に事情を話すのは規則違反。だが、いまはそんなことを言っている状況ではない。
セイラは語った。
「去年の南裾浦港での事件。わたしたちが怪物と戦っていた裏で、レイジが黒月夜という犯罪組織と戦っていたのは、おまえには知らせてなかったな。まあ、おまえのことだろうから気づいてはいるんだろうが」
あのときは惺もまだ完全な一般人で、怪物――異種生命体と戦った際の事情聴取以外のことはしていない。事後にICIS星蹟第2分室に呼ばれて、惺が詩桜里と再会したときだ。ちなみにここでレイジ、リスティと初対面を果たしている。
「そんとき俺が戦った相手ってのが、黒月夜の現頭領、海堂霞だったのは間違いない」
セイラに叩き起こされていたレイジが、工具箱に座ったまま言う。
「霞……凜が最後に言っていた名前?」
「そう。偶然同じ名前の人だったなんてことも考えられるが、ここまでパズルのピースがそろっているんだ。もう間違いないだろう。どういう事情か知らないが、黒月夜が悠の身柄を確保した。それで凜が……まあ、凜と黒月夜の関係は長くなるから、追い追い話そう」
◇ ◇ ◇
さらに夜も更けた頃。
星蹟島へ向かうルートと方法が決まり、明日に向けて英気を養っている時間帯。セイラもレイジも眠っていて静かだ。
ソファの上で横にはなっていても、惺は眠れなかった。
凜のことはもちろん心配だ。
しかしやはり、悠。
いろいろな思惑が浮かんでは去り、眠気を追い出していく。
それでも連日の疲れから、うつらうつらとしてきた頃だった。
唐突に惺のスマートフォンが震える。夜中はいつもマナーモードにする癖があった。
ディスプレイを見て、今度こそ凍った。
「悠っ!?」
セイラとレイジが声に反応して起きてくる。
「どうした?」
だが惺には、セイラの呼びかけは聞こえない。
悠からのメールに、魂のすべてを奪われた。
メールにはただひと言。
たすけて