さっちゃんの手紙を見せると、さすがに警察も重たい腰を上げて動いてくれた。地元の住民や消防などと協力して、手紙のあった近辺を捜索してもらう。
でも、「なに」も見つからなかった。あの手紙以上の手がかりはなく、捜索は早々に打ち切られる。
まあ、どこかでそうなると予想していたから、僕もナオちゃんもショックは少なかった。さっちゃんの遺体なんか見つかった日には、さすがの僕でも首を吊ってしまうかもしれない。だからむしろ、なにも見つからなくてよかったのかもしれないなんて、どこかで思ってしまった。
さっちゃんはあの場所に来て、手紙を置いたのは間違いない。しかしそれから彼女がどこに行ったのか、まるで痕跡はなかった。おそらく本人と神様くらいしか知らないだろう。
手紙を見つけた数日後の夜、僕はナオちゃんを抱いた。
お互い、どしゃ降りのような涙を流しながら。
妻が失踪して間もない時期に、妻の親友だった女性と肉体関係を結ぶ。場所はさっちゃんの部屋。結婚以降、僕とさっちゃんの寝室になっていた部屋。
愛の営み? そんなきれいなものじゃない。ただの傷のなめ合いだ。終わったあとにも、満足感や幸福感などなかった。
さっちゃんのぬくもりを感じていたベッドの上で、僕とナオちゃんを包んでいたのは寒くなるような喪失感と失望感だった。