「ウェイトレス姿、似合っていたぞ」
「……どうも」
美緒は困ったような顔をしつつ、わたしの斜め前に座った。奈々はその向かい、わたしの左横だ。奈々にも同じような言葉を投げかけると、可愛らしくはにかんだ。ふたりともいまは私服だ。
美緒が初対面である紗夜華と椿姫に挨拶し、それぞれが軽く自己紹介。奈々も椿姫に挨拶した。
紗夜華が奈々に「久しぶりね」と言い、それを見ていた悠が少し驚く。
「あれ? 奈々ちゃんって、柊さんと面識あったの?」
「うん。この前、お兄ちゃんやセイラ先輩と一緒に相談に乗ってもらって。その節はありがとうございました」
「ふふ、どういたしまして」
そう言いながら優しく微笑む紗夜華とは正反対に、美緒が仏頂面を作る。
「ねえ、相談って、もしかしてわたしのこと?」
「え、あ……いや、その……美緒ちゃんというより、バンド全体のことだよ」
「ふうん。でもその言い方だと、わたしのこともなにか話したんでしょ。奈々、あんた嘘つくのも誤魔化すのも下手すぎ」
「はぅっ」
「わたしの両親を一度見てみれば? お互いが嘘をついていることに気づいているのに、さらにどちらも嘘を重ねるの……あはは、笑っちゃう」
乾いた笑いだ。実に乾いている。
「み、美緒ちゃん……っ」
泣きそうになる奈々。
「なあ美緒、そこまでいじわる言うものじゃないぞ。ご両親のことはともかく、奈々が友達想いなのはおまえも知ってるだろ」
美緒は無言で誰もいないほうを向いた――と、向いた先にちょうど凜がいて目が合ったらしい。即座に目を逸らし、ばつの悪そうな表情をする。
「わたしの話はもういい。せっかくの料理がまずくなる……なります、から」
初対面の面々もいる中で、明け透けに語りたくはないらしい。気持ちはわかるから、ここはそっとしておこう。
ふと、重大な事実に気づいた。
「これはまさか、女子会というやつではないか?」
女子が6人も集まっての食事。これを女子会と言わずになんと言う。
「そうかもね。でもそれがどうかした? ……セイラ、なんでにやけてるの?」
と、悠。
「ふふ。夢が叶った」
このわたしが女子会なんて、日本に来るまでは考えられないことだった。詩桜里にもあとで自慢しよう。
近くを通りかかった凜に声をかける。徐々に客が増えてきているから、なるべく早く終わらせたかった。
「写真を撮ってくれないか」
「写真? まあいいけど」
凜にスマートフォンを手渡し、6人が視線を向ける。
「……んー、綾瀬さん、もうちょっと笑って」
美緒は凜を睨んだ。
「ご、ごめん。そのままでいいから」
カシャっというシャッター音。
凜からスマホを返してもらい、写真を確認してみる。悠、紗夜華、奈々は自然な微笑み。椿姫も若干緊張が表情に表れているが、がんばって笑ってくれている。美緒は仏頂面だが、これはこれで味がある。
「セイラ、あとでその写真俺に送ってくれない?」
「それは構わないが」
「あとで真奈海に転送してみる。自分がこの場にいない悔しさと寂しさに、地団駄を踏むといい……くっくっく」
凜の表情は、悪代官のそれだった。
「お兄ちゃん、ひどいよぉ」
奈々が兄を白い目で見つめる。
と、近くの客が凜を呼んだ。
「あ、はい! ――じゃあよろしく」
悪代官の表情を一瞬で捨て去り、凜は颯爽と去っていった。
「凜はたまにいじわるになるな」
「そうなんです。けっこうひどいんですよ?」
奈々は笑いながら言った。
「先ほどから横目で見ているが、凜の働いている姿はさまになっているな」
動きに切れがある。接客態度も朗らかかつ丁寧で、近くの席に座っていた小さな男の子が、あこがれの眼差しでずっと凜を見ていた。
「凜くん器用だし要領いいから。智美さんも頼りにしてるの」
「あ、わたし知ってる! ひそかにマダムキラーって呼ばれてるんだよね。近所の奥さま方のハートを鷲づかみしてるって」
と、奈々。
「ほう。それは隅に置けないな」
それからしばらくの雑談。歓談、と呼べるまで打ち解けてはいなかったが、話は尽きなかった。
みんながみんな、それぞれ悩みを抱えている。それでも前を向いて、ときにはうつむきながらも必死に生きている。そんな中にわたしがいて、様々な感情を分かち合っていられるのは――
幸福以外のなにものでもなかった。
「ねえセイラ。……セイラ?」
わたしにしてはめずらしく、しばらく呼ばれたことに気づかなかった。悠の碧眼が、わたしをのぞき込んでいる。
「どうした?」
「どうしたって、こっちの台詞だよ? めずらしくぼーっとしちゃって」
「いや、なんでもない」
そのとき、智美さんがワゴンを引いて料理を運んできた。
「お待たせしました」
美緒と奈々の料理。ふたりともあらかじめ頼んでおいたらしい。
「あと、これはうちのお父さんからの差し入れです」
ちょうど6枚に切られたピザだった。
智美さんが去っていったあと、みんなでピザを食べる。
「お……美味しい……!」
と、椿姫。
「これ……や、やばいわ」
これは紗夜華だった。自分で言ってて恥ずかしいのか、少しだけ頬を染めている。
そしてわたし以外の面々は、面食らったような顔をした。
「このあいだのお茶会のときの話か?」
「ええ。豊崎さんから言われたでしょ。試しにやってみたんだけど、ちょっとは女子高生らしかったかしら」
「どういうこと? 柊さん、真奈海とも面識あったの?」
悠が訊いてくる。紗夜華が簡単に説明した。以前、紗夜華の小説を呼んだ感想を言い合ったときの、真奈海の話。椿姫や奈々は感心しながら聞いていた。美緒は黙々と料理を食べ進めている。
「ふーん……わたしの知らないところで、人間関係が広がっていたんだね」
「それもこれも、ほとんどセイラの行動力のおかげよね」
と、紗夜華。
「セイラと出会うまで、こんな大勢で食事するなんて想像してなかったから」
「あ……わたしも」
控えめに手を上げる椿姫。
「いまさら言いにくいのだが、椿姫はこんな大勢の食事になってよかったのか? 本当は悠に相談があったのでは……?」
演劇部に復帰した椿姫になにがあったのかは、もう知っている。
「ううん。それはもういいの……セイラちゃんたちが来る前に聞いてもらったから」
切ない笑顔の椿姫。
「そうか。わたしもできることがあるのなら、なんでも相談してくれ」
「……ありがとう」
「椿姫はいまでも演劇が好きか?」
「……うん……うん。好きだよ」
嘘偽りない答えだろう。椿姫の心の芯は、実はかなり強いんではないかと思う。どんなにつらくとも投げやりにならず、たとえ逃げ出してしまったとしても、自分の問題に真摯に向き合おうとしているのは明白だ。
「ねえ、ここに現役の女子高生が6人も集まっているのだから、もう少し女子高生らしい話をしてみない?」
切り替えた紗夜華は、心底楽しそうだ。
「たとえば?」
わたしが投げかけると、紗夜華は思案げな顔をして、やがてなにか思いついたような反応をした。
「恋バナ、とか?」
「よし、乗った」
「ちょ、ちょっと待ってセイラ。そんな簡単に」
「なにを慌てているのだ悠は? こんなおもしろそうな話もないだろうに。くっくっく」
「さっきの凜くんみたいな顔! ねえ、なんでそんなに楽しそうなの? ……柊さんって、恋バナとか興味あったの? なんかイメージが」
「あら、わたしだって恋バナのひとつやふたつ、興味あるわよ。ところで真城さんは好きな人いる?」
「えぇっ!? あ、いえ、そんな……その」
「悠の好きな人なんて決まっているさ。嫌よ嫌よも好きのうち、なんて言葉がこの国にはあるだろ」
「だ、誰が惺なんかぁっ!?」
「悠ちゃん! 語るに落ちてるよぉっ!?」
奈々の突っ込みに慌てふためいた悠は、釈明の言葉を探すが見つからず、やがて水を一気に飲み干した。
「はあ……はあ……い、いまのはなんでもないから。気のせいだからっ」
「真城さんのイメージも変わってくるわね。あなたがこんなに慌てたところ、想像もできなかったわ。小日向さん、クラスでこんな真城さん、見たことある?」
「な……ないかな」
「イメージっておもしろいわね。自分自身が持つイメージと、他人からのイメージ……その違いが……」
紗夜華が創作モードに入り、頭の中のノートにいろいろとメモしているようだ。
「紗夜華、いま小説は書いているのか? ……そういえば、わたしや悠や惺の三角関係を題材にしたアイデアはどうなったんだ」
三角関係という言葉に悠がまず過敏な反応するが、まだダメージが抜けきってないのか、口をぱくぱくさせるだけでなにも言わなかった。椿姫と奈々は気にはなるが内心は複雑、といった表情を浮かべている。が、やはりなにも言わない。美緒は変な空気になったことには気づいたようだが、なにが原因なのかよくわからない様子だ。
「ああ、あれね……結局バッドエンドにしかならなくて、お蔵入りしちゃったの。取材した手前、申しわけないんだけど」
「構わないさ。バッドエンドの中身は気になるが」
「バッドエンドは読者に受けないって気づいたの。誰もが幸せになる大団円、とはいかないまでも、読んでて楽しかったり、幸せになるような物語のほうがいい気がして。ほら、川嶋くんにも読者を意識したほうがいいって言われたでしょ? ……あ、そうだわ。みんな本は読む? 最近、どんな本読んだのか聞かせてほしいんだけど」
紗夜華は勉強熱心だ。初対面でも臆することなく、どんどん訊いている。この愚直なまでの素直さと真面目さは、どうして姉にはないのだろう。あったとしても、処女と同じですでに失ったものなのか。今度訊いてみよう。
再び雑談――いや、今度こそ歓談と呼べるものになっていた。
ところで少し前から美緒が気になっている。あまり発言してない。
「美緒、あまり楽しくないか?」
「……どうして?」
「さっきからずっと仏頂面じゃないか」
「…………。別に……こういう顔ですから」
「美緒ちゃん、またそういうこと言って。幸せが逃げちゃうんだよ?」
「余計なお世話。……はあ、奈々のまわりっていい人ばっかりでいいわね」
「もうっ」
斜に構えた美緒に、さすがの奈々もふくれている。
「美緒、それは別に奈々のまわりだけじゃない。いまではもう、美緒のまわりでもある」
美緒は黙っている。
「ふむ。この場で説教するのも気が引けるな……よし、こうしよう」
なにを言い出すんだと、美緒が身構える。
「今度、わたしにギターを教えてくれ」
「…………はあ?」
「だから、ギターだ。アコギでもエレキでもどっちでもいいぞ」
「なんでわたしが。ていうかセイラ先輩、ギター始めるの?」
「ああ。いま決めた」
「…………」
「自分で言うのも変だが、わたしは物覚えが早い。すぐに美緒の実力を追い越すだろう」
「はぁっ!?」
「それで、いまちょうどボーカル兼ギター不在の『The World End』に編入する。もちろん歌の練習もしてな。作詞作曲にも挑戦してみるか。やがて晴れて新生『The World End』のフロントマンとして、華々しくデビューを飾ろうと思う」
「ちょ、ちょっと待って!」
「うむ。前任者としての話を聞こうか、元ボーカル兼ギターの綾瀬美緒くん」
「わたしがいつ辞めた!?」
「まだ辞めたとは聞いてないな。しかしだな、手助けしようとしている手を振り払い、周囲に不機嫌を振りまき、いつまでも斜に構えたやつが、実は『解決しようと前向きに考え、ひたむきにがんばっています』などと思われているとでも? このままではフェードアウトするのも時間の問題だ」
「――――っ」
「悔しいか? わたしも悔しいぞ」
「な――なんで先輩が」
「わたしはまた、美緒の演奏を聴きたい。それができないのなら、悔しいとしか言いようがない」
「――――」
「正確には、あのバンド全体の演奏だ。はじめて見たときの感動は、いまだに忘れてないぞ」
「――っ、あ……あんなバラバラな演奏……っ」
美緒の瞳に涙が浮かんできた。
「たとえバラバラでも、一緒に演奏していたのには間違いないんだ。この先、ずっと一緒に演奏できるわけではないかもしれない。そう考えると、実にもったいなくはないか?」
もったいない――とても素晴らしい言葉だと思う。日本語にしかない言葉で、無理に外国語に翻訳すると違った意味合いになってしまう。
「わたしは……っ……どう……すれば……」
「あの、綾瀬さん」
悠が切り出す。
「実はね、ちょっと考えていたことがあったのだけど。その、バンドのこととご両親の件、分けて考えてみない?」
「え……?」
「これは凜くんも言っていたことだけど、ご両親の件はどうしようもないと思うの。こればっかりは当事者の問題だし、わたしがどう考えても、そう結論するしかなかった……だからね、こういう言い方はよくないと思うけど、ご両親のことは放っておくしかないんじゃないかなって」
悠にしては思い切った考え方だ。美緒だけでなく、わたしを含めみんなが目を見張った。
「でも、バンドは違う。あれは綾瀬さんの心持ち次第で、風向きが変わると思う。ねえ、ひとまずご両親のことは忘れて、バンドを復活させよう? 居候のわたしが言えることじゃないけど、綾瀬さんが星峰家にいるうちは全力で手助けするから。ね?」
「でも……」
家族が崩壊しつつある中で美緒が自分を見失ったのなら、逆に安心する居場所があれば取り戻せるかもしれない。星峰家はそういう意味では理想的だ。凜も奈々も優しいし、智美さんも頼りになる。家の人間ではない悠にしても、ここまで他人に優しく接することができる人間を、わたしは彼女以外知らない。
去年の春に起こったセレスティアル号の事件を思い出す。テロリスト集団に占拠されたクルーズ船。
あのとき、乗客として偶然乗り合わせていた悠は突然、次に殺される人質として指名された。しかしそんな状況下でも悠はほとんど怯むことなく、怖じ気づくこともなく、澄みきったピアノの旋律を奏でた。
『わたしを殺したら、それで最後にしてください。もう誰も殺さないで――』
悠のそんな言葉と旋律が、あの場にいたすべての人質から完全に恐怖心を払いのけ、希望を与えていた。そのときの映像はインターネットで全世界に公開されていたから、悠は「ピアノを弾いた少女」として、一躍時の人となっていた。
ちなみに悠には、あの場にわたしがいたことを伝えてない。……もしかしたら、そろそろ話してもいいのかもしれない。
――わたしがそんな物思いにふけっていた頃、水差しを持った凜がやってきて、それぞれのグラスに水を注ぐ。
「ちらちら聞こえていたんだけど、セイラはちょっと強引すぎ」
「自覚はある。だが反省はしない」
「まあいいけど。……ねえ綾瀬さん。いい加減、誰かに頼ろうとする気になった? まわりがどんなに助けようとしても、きみは最後まで自分の殻に閉じこもっていたよね」
美緒が凜を見つめる瞳に、はじめて弱々しい感情が含まれていた。
「――ま、俺が言えたことじゃないんだけどね」
苦笑を残し、凜は仕事に戻っていく。
奈々がおもむろに席を立つ。
ついにすすり泣いた美緒の肩を、抱きしめるために。
食事を終えて店を出たあと、わたしは星峰家にお邪魔していた。
紗夜華と椿姫は帰り、わたしと奈々、そして美緒を交えた3人で星峰家のテーブルを囲んでいる。悠はお茶を淹れに席を外していた。
午後7時半過ぎ。奈々の話では、店はちょうどピークに当たるらしい。
「あの……その……みんな、ごめんなさい」
「美緒ちゃん?」
「わたし、自分のことしか考えられなくて……ずっと不機嫌な態度だった……奈々、ごめんね?」
「ううん。もういいから」
奈々の胸に美緒が顔を埋める。
「奈々……っ、わたし、男だったら絶対あんたと結婚してるっ」
「えぇ? もう、困るなぁ……ふふ」
「今度、みんなと話すから。もう逃げないから」
「美緒ちゃん……!」
表情がぱっと輝く奈々。
悠がお茶を持って戻ってきた。ほうじ茶のいい香りが漂ってくる。
「ねえセイラ、こうなること予測して、あんなこと言い出したの? ギター始めて、バンドに編入してやるとか」
「まあな。美緒が『The World End』を愛しているのは気づいていたから。美緒、それを試すようなことを言って申しわけなかった」
「別にいいです……その、ありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げる美緒。ここまで殊勝な美緒をはじめて見た。
「ああそうだ。バンドに編入するのは方便だが、ギターを教えてくれと言ったのは本心だぞ」
「え?」
「いますぐとは言わないが、近いうちに教えてもらえると嬉しい」
「わ……わかりました」
困惑やらいろんな感情の交ざった返事。嫌ではなさそうで、安堵する。
「よし、それなら期末テストが終わってからにしよう」
わたしがそう言った瞬間、美緒と奈々の表情に影が差した。
「期末テスト……っ!? わ、忘れてたっ! どうしよう美緒ちゃん! ……あ、もう再来週からっ!?」
テーブルの上に置かれた卓上カレンダーを見て、奈々の慌てっぷりがさらに加速していく。期末テストは再来週の月曜日から5日間、みっちりと行われる。
美緒の顔が急に清々しくなった。
「テストなんか最初からあきらめてるんだけど。だいたいね、家やバンドのことで授業なんか頭に入ってなかったし」
清々しいというより、ただの諦観だった。
「だめだよ! あのね、美緒ちゃんが休んでいるあいだ、ちゃんとノートとってたんだよ」
「そ、それはありがとう……?」
教科書は完全にデジタル化しているが、ノートにまでは及んでない。手書きの大切さを重要視して、授業のノートはアナログだ。
「そうだ。来週、紗夜華たちと一緒に勉強会を開くことになっているんだ。ふたりも参加するか?」
わたしの提案にいちばん不思議そうな顔をしたのは悠だった。
「勉強って……柊さんは学年2位の秀才で、セイラは……勉強会やる必要あるの?」
「言葉が足りなかった。わたしと紗夜華が勉強するというより、メインは真奈海だな」
来週からバイトを減らし、勉強する時間を作ったこと、凜が勉強を見てほしいと頼まれたことを伝える。
「ちょうどテスト前だから、凜もみっちり勉強を見てあげる予定だったのだが、店の手伝いをどうしてもお願い、と智美さんに頼まれたそうだ」
ふつう、テスト前の子どもを無理に働かせる親はいない。それでも凜ならテストも仕事も両立させられるだろうという、絶大な信頼があるようだ。
「だからわたしが代打で見ることになった。……ああ、悠も参加するか? 学年1位と2位がいれば、真奈海も心強いだろう」
「いつ?」
「来週の火曜日の放課後」
「あ、ごめん。その日は病院に行かないと」
悠が病院に通っているのは知っていたが、理由までは知悉していない。凜にちらっと訊いてみたが、詳しい事情は知らないそうだ。
「まあ仕方ない。……で、ふたりはどうする?」
「参加します! よろしくお願いします!」
「わたしはパス。今度の期末テストは捨てたの」
「美緒ちゃんっ!? さっき、もう逃げないって言ったばかりなのにっ!」
「そ、それとこれとは話が別」
「だめ! セイラ先輩、美緒ちゃんも強制参加で!」
女子会に続いて勉強会。
わたしはいま、本当に青春を謳歌しているようだ。