Prologue 03

 テレビのあらゆるチャンネルが通常の番組を中止し、緊急放送を流していた。
 上空から俯瞰する形で、セレスティアル号が映っている。埠頭や船のまわりは物々しい空気に包まれていた。
 
『あそこに停泊している海空船セレスティアル号が、2時間ほど前に銃器で武装したテロリストにジャックされたと情報が入ってきました。ごらんのとおり、セレスティアル号は海上保安庁の巡視船により完全に包囲されています。地上側でも機動隊が配備され、周囲は騒然としているようです。警察発表によりますと、乗客568名、船長を含む乗員は103名。合わせて671名全員が人質になっているとのことです。……現在までに犯行グループからの声明はなく、動機も不明……はい? あ、いま新しい情報が入ってきました! えー、セレスティアル号を占拠したテロリストが、インターネットの動画サイトで犯行声明を発表するようです!』
 
 ヘリコプターによる実況中継から、動画サイトの画面に切り替わった。
 ひとりの人物が映っている。その人物の異様さに、視聴者は度肝抜かれた。
 サブマシンガンを持っており、頭のてっぺんから足の先まで、全身を白い装束で覆っている。ブーツまでも白い。顔は白い目出し帽の上にガスマスク、上半身は迷彩色の防弾チョッキを身につけている。肌を露出している部分はない。
 人物の背景には、中央ロビーに座らされた人質たちが映し出されていた。
 
『我々は「革命戦線アナ・シュテイラ」である! 日本政府に要求する。人質の早期解放を望むのなら、身代金20億円を分割し、指定する複数の口座へ順に振り込め。最初の期限は3日後の正午とする』
 
 声は男性で日本語をよどみなくしゃべっているが、発音がやや怪しい。それから彼は、海外銀行の口座を読み上げた。スイス銀行をはじめ、世界各地の匿名性が非常に高い口座を指定してきた。
 
『最初の期限までに入金が確認されない場合、30分ごとに人質をひとり殺害する』
 
 テロリストはカメラに近寄り、嘲笑するような雰囲気をまといながら続けた。
 
『日本政府のお偉さん方、貴様らお得意の「テロには屈しない」などとつまらないことをほざくのなら、盛大な花火が上がる。覚悟しておけ』
 
 画面が暗転した。


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