この記事は前回の続きだぞ。
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主な登場人物と前回のおさらい
僕
シナリオ、企画書制作、ホームページ運営を主に担当。
S
名目上はサークルのリーダー。企画をはじめ、外部の絵師さんとのやりとりなどを担当。
H
経理や作品のパッケージ制作などを担当。
前回の記事は、↑ここまで解説しました。
なので今回の記事は2011年~の解説です。
方向性の転換と、事業の拡大(笑)
2011年前半~
2010年、半年くらいかけてなんとかドラマCDを制作できた僕たちのサークルですが、年明け早々再び壁にぶち当たります。
真っ先に問題になったのが、資金がないこと。制作予算はみんなのお財布から出し合うしかなかったんです。でも当時僕も含めてみんなバイトで、お金に余裕があるわけではなかった。
それから、サークルの知名度が皆無なのも問題でした。ホームページはいちおう僕が作ったんだけど、「そもそもサークルの存在を知らないとホームページにたどり着けない」っていう、さらに困った問題があった。
新年早々、これからどうしていこうかと話し合ってたような気がする。
2011年なら、もうTwitterってなかったっけ?
あるにはあったけど、いまほど主流じゃなかった気がする。まだスマホよりもガラケー持ってた人多かったし。情報の拡散速度は、いまよりもゆっくりだったよね。
結局どうなったの?
まずはいろいろ売って資金を集めようって話になって。そうするとドラマCDみたいな全年齢向けの商品だと、知名度がないと売れないよね? 最初からこういうのを作るのはコスパ悪いよね? となる。
だから、知名度を高めるのと資金を集めるの同時に行うために、成人向け作品を作ったらどうかという話になったわけです。
エロってさ、多少クオリティが低くても、全年齢向け作品よりは売れるんですよ。そんなこと自分がいちばんよく知ってる。
なるほどな。
世の中スケベでバカな連中ばっかりだからな!
最終的に、
- 全年齢作品(ゲーム、ドラマCD等)を制作するライン
- 成人向け作品(エロCG集、同人誌等)を制作するライン
- グッズを制作するライン
以上の3つのラインをブランドで分ける戦略をとりました。もちろん中の人(僕たち3人)は一緒で、もとになるサークルもひとつなんだけど、制作物によって発表するときのブランド(サークル名)を変える。
昔、『松下電器産業株式会社』が「パナソニック」と「ナショナル」っていうブランドを使い分けてたみたいな?
映像・音響機器のたぐいがパナソニック、洗濯機みたいな白物家電がナショナルで販売されてた。
いまは全部パナソニックで統一されてるけど。
それ。
で、コストがより高いゲームみたいな作品を制作するのが最終目的なんだけど、それの資金を得るためにリストの下の2つをまずメインで取り組むっていう流れです。
CG集とかグッズは、ゲームなんかに比べたらはるかにコストが低いんです。外注の絵師さんがひとりでもいればなんとか制作できるんだよね。CG集のセリフやショートシナリオなんかは僕が書いてたけど、2~3日あれば終わるんで。
とりあえず、サークルの方向性はこんな感じで決まりました(いやまあ正確にいつ決まったのかなんて覚えてないんだけど、たぶんそんな感じだっただろうという意味合いで書いてます)。
ところで2011年といえば東日本大震災だけど、どんな影響があったの?
参加しようとしてた同人イベントが延期になってかなぁ。
あとガソリンが品薄になって、1ヶ月くらいは車もバイクも乗れなかった。僕が当時住んでたところは計画停電もあったけど、いま思い返せばめずらしい経験でしたね。
日本国内はあの当時完全に病んでたけど、同人界隈はそんなに変化なかった気がする。僕が鈍かっただけかもしれないけど。
東日本大震災以降~
ブランドを分けて、いろんなことを同時進行でやる方向になったわけです。
でもね、あれです。
結論を言うと、このやり方は失敗でした。
そうなの?
考え方自体は間違ってない気がするけど……
考え方自体はね。
そうだなー……あと2~3人メンバーが多くて、役割分担がもっと明確で責任の所在が明らかな状態で、さらに全員が優秀だったら、そのやり方がベストだったかもしれないです。
新しい企画の打ち合わせ、絵師さんへの仕事の発注、グッズ製作会社への依頼、CG集用のショートシナリオの制作、ホームページの更新、次から次へとやってくるイベントの申し込みと準備等々……こういう作業を全部同時進行で3人だけでやってたんですよ? 最盛期なんか、毎月1回はどこかのイベントに参加してた。
まあ、どこかで無理が出ますよね。
結果的に、全部中途半端だった。
要するにシングルタスクですら満足にこなせない連中が、マルチタスクをこなせるわけないんです。僕たち3人に、これらすべてを満足にやりきるだけの能力がなかった。
自分たちは自分で思っている以上に無能だったんだと、もっと早く気づくべきでした。
言い切ったwww
あ、上の見出しの「事業の拡大(笑)」ってそういうことかwwww
ブランド化して同時進行することを「事業の拡大」って言ってたけどね……当時はもちろん必死だったけど、いま思えば滑稽ですよ、ほんとに(笑)
とりあえず、当時の僕たちにこの本を送ります(たぶん当時の僕たちがこの本を読んだとしても、効果はなかっただろうなぁ……)。
同人業界はいまも昔もヤバイ(?)
2011年はエロCG集をよく作ってたかな(たぶん。記憶の限りではそう)。
でも出来上がるものがとにかく中途半端なクオリティでさ。制作時間も少なければお金も宣伝も圧倒的に足りない。正直、頼んだ絵師さんの能力もそんなに高くなかった。
自分たちで作ったはずのエロCG集にまったく興奮しないとか、完全に終わってるでしょ。結果的に、制作者ですら絶対に買わないゴミを量産してるっていう状態に。
もちろんぜんぜん売れねぇ。
それはひどいwww
なんとかしようって話にはならなかったの? 人を雇って余裕を作るとか。
実際、掲示板で募集したことはありましたよ。とりあえずお金のことは度外視して、1回2回ではなく何度も定期的に。そういえば募集担当してたの僕だっけ……? 何回か面接した記憶が……けど、もうあまり覚えてないんだよなぁ。
まーでも、素晴らしい人材がやってきたって記憶はないっす。1回会ってもすぐ連絡取れなくなったり、サンプルで送ってくれた作品のクオリティが、そもそもう○こだったりとか。
あのね。
同人業界なんてそんなもんです、はい。(よく知らんけど、たぶんいまでも変わってないんじゃないの?)
wwwww
でもさ、またやり方を変えてみるとかしなかったの?
もうゴミを量産するのはやめて、ひとつの作品に全身全霊をかけるとか。
それはあんまり考えてなかったかも。
あまり深く考えることなく、いまやってるやり方が正しいんだって思い込んでた、みたいな。なんでだろうね。
それからいちばんの問題は、僕たち3人の適正と相性ですわ。
ぶっちゃけ、僕は成人向けの作品を制作することには最後まで興味を持てなかった。エロゲーとかは昔から好きでよく買ってたけど、自分でそういうのを作る気はなかったのです。あと、グッズに関しても特に興味はなかったね。
けどSはいろいろ手を出したい人でさ。グッズはもちろん成人向け作品も最初から作りたかったみたいだけど、いま思えば彼の場合センスが――まあ、ここで悪口を言うのはフェアじゃないから、これ以上は言わないけど。
Hくんはどうなのさ。
んー、彼はあまり、クリエイティブなところに能力を発揮するタイプではなかったかな。経理とかパッケージ制作とか、「答え」がくっきりしていることに関して能力を発揮する感じ(これは「いまの僕の主観」で書いてることだから、もしかしたら間違ってるかもしれない)。
だから企画に関しては、主に僕とSが話し合って決めてた気がする。でも僕は上に書いたとおり、特に成人向け作品に対する情熱はあんまりなかったから、結果的にSが言ったとおりに話が進むみたいな。
ここまで読んでいるとわかると思うけど、もうこの3人相性最悪ですよ。合わないパズルのピースを無理やりはめこんだような。
よくもまあ、そんな歪な状態で3年も続けたもんだと思う。
そういえば僕が「このサークルなんか違うなー」って考え始めたのは、この頃だったかも。よく覚えてないけど、2011年のどこかだった気がする。
今回の記事も長くなってきたな。
こんなの読んで誰が喜ぶんだ。
とりあえず、ここでまた分割するからな!
余談。『冴えない彼女の育てかた』というラノベの虚構。
作者の丸戸史明さんは、2000年代中頃にエロゲーのライターとして有名になった方です。『パルフェ 〜ショコラ second brew〜』とか『この青空に約束を―』のシナリオ担当ね。あー懐かしい。
で、僕はそれらの作品で丸戸さんのファンになったので、当然この『冴えない彼女の育てかた』も手に取ったわけです。
高校生たちが同人サークルを始めて、同人業界でのし上がっていく的なストーリー(で、合ってたっけ?)。
でも6巻くらいで読むのをやめました。アニメもたしか1期しか見てない。
だってね、主人公のまわりにめちゃくちゃうまいイラストレーターの幼なじみ(金髪美少女)とか、プロの作家で毒舌で妖艶な先輩(黒髪ロングのお姉さん)とか、存在感がないとか言われているわりには超絶美少女のクラスメイト(作中で髪型がよく変わる)とか。
そんなのいるわけないじゃないですか。
こんな恵まれた連中が同じ学校にいて同人サークル作るとか、どんな奇跡だよ、と。たしか丸戸さん本人も「こんなことあるはずがない」とかあとがきに書いていたような(違ったらごめんなさい)。
実際に同人やって心身ともに削った身としては、もうこの虚構が虚構であることですら我慢できなかった。いやほんとに。僕シリーズ物ってだいたい最後まで読むんだけど、本当に途中で投げ出してしまった。
そんな作品。
……どんな作品だ。
ただし、この作品がつまらないと言っているわけではないです。
同人業界の内情を知らない大多数の人だったら、ひとつの物語として楽しめるのではないかと思うので、最後におすすめしておきます。
それでは、続きは次回。
お楽しみに(?)