はじめて識る世界は、なによりも美しかった――– category –
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Epilogue
シディアス総本部に併設された医療施設の一室。惺はぼんやりとした意識の中、ベッドに横たわっていた。先ほどまで誰か白衣を着た人が何人かいた気がするが、よく覚え... -
8-6
数秒とも数時間とも思える時間が過ぎ、クリスは目を開けた。ふと、仰臥しながら倒れていることに気づく。 空が見える。燃えるような茜色をした空。「……………………………………... -
8-5
世界が輪郭を失っていく。 星櫃は突如として発生した膨大な「闇」に呑まれ、その姿が見えなくなっている。しかしその闇の周囲から、大陽のようなまばゆい輝きがあふ... -
8-4
氷で造られたドーム状の天井。そして湖に向かって突き出した人工的な足場。かつて氷の壁に並んでいた哀れなオブジェはもうない。シディアスが回収して丁寧に荼毘に付... -
8-3
「『明日から本気を出す』のモットーで有名なわたしだが、今回ばかりはいまこの瞬間に本気を出す」 洞窟内の扉の前で、蒼一が誇らしげに言う。その後ろで様々な突っ込... -
8-2
この場所に足を踏み入れることは、もう二度とないと思っていた。 南極大陸西部の地域――通称マリーバードランドは、いずれの国家も領有権を主張していない無主地であ... -
8-1
「またここに来るとはね……」 目の前にそびえ立つ巨大な建物を前に、クリスがつぶやいた。 近代的なデザインを誇るアリーナ状の巨大な建造物。エルドラード郊外に位置... -
7-4
惺が再び星櫃の前に立つ。 手を触れた。 以前は未知の感覚しか感じることができなかった。 そして今回。言語化不可能な気配が、惺の脳内を揺さぶってくる。 ――無... -
7-3
惺が連れ去られてから、2ヶ月が過ぎ去ろうとしていた。すでに11月に入っており、南半球のフォンエルディアでは春の陽気さに包まれている。 クリスは実家に身を置いて... -
7-2
《あなたにこれあげるわ》 アヌビスが差し出してきたのは、ひと振りの刀剣だった。 漆めいた赤黒い拵え。反りのある日本刀のように見えるが、西洋風の意匠が強かった...